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「麻酔が専門」の医者がいるって本当ですか?

Q;
麻酔が専門の医者がいるって本当ですか?



A;
本当です。

「麻酔科医」といいます。
ほとんど一日中手術室の中にいて
手術の麻酔を専門にしている医師が
日本には約7000人います。
内科の医師は約10万人弱、外科医は3万人弱、
整形外科医が約2万人、産婦人科医が1万人くらいでしょうか。
これらの科と比較すると少ない数ですが、
大きな総合病院には必ずいるといって過言ではないのが麻酔科医です。

「麻酔」というと、歯医者さんの麻酔のように
傷の場所、あるいは傷の近くに麻酔薬を打って
傷の場所を痛くなくすような麻酔を
まず連想する方が多いかと思います。
それももちろん麻酔の一種なのですが、
しかし麻酔科医が主に専門とするのは
点滴やガスの吸入などで手術中にずっと投与しつづけるような麻酔です。

そういった麻酔というのは、
ちょっとでも多すぎれば患者さんの体に負担がかかりすぎるし
麻酔からなかなか醒めなくなる、
逆に少なすぎても
患者さんの体に大きなストレスがかかることになるし
全身麻酔なのに手術中に目が覚めてしまうということも起きかねない、
また重い持病をお持ちの患者さんなどでは
ちょうどいい量の麻酔にさえ体が耐えられなくて
他の薬(たとえば心臓の力を強めるような薬)が
必要になることもあります。
だから手術の進み具合と患者さんの状態を常に見守りながら、
刻々と変化する手術によるダメージの大きさと
お身体の状態と麻酔薬とのバランスがうまくとれるように、
手術中ずっとつきっきりで麻酔を調節している専門の麻酔科医が
現在の手術では必要なことが多いのです。

昔は外科の先生が麻酔も担当することがよくありました。
ですので、「専門の医師でなくても麻酔は簡単に行える」
と考える風潮も以前にはありました。
しかし昔は例えば脳外科や整形外科の手術も
外科の先生が行っていた時代があったのです。
それが今では専門が細かくなったことで、
そのぶんの高い医療技術が実現しました。
脳外科の手術は脳外科の先生にお願いしたい、
整形外科の手術は整形外科の先生にお願いしたいと思うのが
今では普通の考えだと思うのですが、それと同じように
「麻酔は麻酔を専門としている麻酔科医が担当するのが
最も安全だろう」と考えるのが今では一般的だと思います。

高い医療技術と先ほど申しましたが、
近年は重い持病をお持ちの患者さんが手術を受けることが
昔よりもだいぶ増えました。
20年前には65歳以上は高齢者として
慎重にあたらなくてはならないとなっていたのが、
今では65歳の手術患者さんはどちらかというと
「まだお若い」という印象です。
透析を受けている患者さん、
心筋梗塞をしたことがあって激しい運動はできない患者さん、
90歳をこえた患者さん、・・・
例を挙げればきりがありませんが、
そういった「難しい」患者さんが増えてきたことも
麻酔科医が必要とされる理由です。

しかし残念ながら日本では麻酔科医の絶対数が不足しているために、
麻酔科医がすべての手術麻酔を担当できていないのが現状です。

すべての手術患者さんに
少しでも安全に手術を受けていただけるようにと
願ってやみません。


参考; 麻酔科医になるには どうしたらいいのですか?
by narkome_d | 2008-07-30 15:45 | ちょっとした疑問など

麻酔に関するQ&Aとかなんとか。 まったりやってます。


by narkome_d