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持病を持っている場合の全身麻酔のリスクについて教えて下さい。

Q;
私は先天的な脳血管の病気で放射線治療を受けました。
まだ完治していなくて、
今後の検査結果により治療を追加するかもしれない状態です。
しかし症状は全くなく、普通に暮らしています。

今回、胆石症がみつかり内科の先生に手術を勧められました。
脳外科の主治医には胆嚢摘出手術の話をして
大丈夫だと言われていたのですが、
外科を受診したところ
「全身麻酔は通常でもリスクがあるが、あなたの病気はリスクが高すぎるので
 癌などでなければ今すぐ手術の必要性はない」と言われ手術中止となりました。
私としては、先々の不安もあり手術するつもりでいたのですが…
脳血管の持病があると、全身麻酔はそれほど危険なのでしょうか?
持病が100%完治するまで私は全身麻酔を受けられないのでしょうか?



A;
持病がある患者さんでの全身麻酔は、それがない患者さんの全身麻酔よりも
少し危険性が高くなります。
その「少し」をどう考えるかで、手術するか否かを決めることになるわけです。
可能性としては「少し」でも、あなたの病気では手術中に
やむを得ない経過などで頭蓋内出血が生じれば
命にかかわる大変なことになりますので、
躊躇する外科の先生のお気持ちもごもっともだとは思います。

あなたの具合の詳細がわかりませんので、この一般論以上のことは
ここでは申し上げることはできません。
他の意見も聞きたいということでしたら他の病院の外科の先生に相談するか
麻酔科の診察を受けるかをお勧めします。
いずれにしても今おかかりの脳外科と内科の先生から
紹介状を書いてもらうといいでしょう。

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必要ではない手術というのは存在しませんが、
必要度というものはやはり存在します。

1);手術しないとすぐにでも命の危険が生じる手術
    (大けがで大出血している場合や、
     腸がつまって破裂し全身に菌が広がってしまっている場合など)

2)-1;手術すれば根治できる癌の手術
    (手術しなければ数年の命なのが、
     手術すれば天寿を全うできるであろう場合など)
2)-2;近いうちに命の危険が生じてしまうのを予防する手術
    (放っておけばほぼ確実に腸閉塞になりそうな状態を
     改善する手術など)
2)-3;すぐには命にはかかわらないけれど、
    手術しないと生活がとても不便な場合
    (骨折していて、手術しないと何週間も寝たきりになっている間に
     他の病気になってしまう心配がある場合など)

3)-1;命にはかかわらないし手術しないと生活できないわけではないけれど、
     生活に支障がでているような場合
    (ひどい腰痛であまり出歩けないような場合など)
3)-2;今すぐ命にはかかわらないけれど、
     手術しておくと将来大きな病気になることを予防できるであろう場合

4)手術しないととても生活が不便というわけではないけれど
     手術することで病気自体をよくして生活の質を上げることができる手術

考え方により順序が多少変わるかもしれません
(特に3-2は予防できる疾患によってはもっと上になるかもしれません)が、
とてもおおざっぱに言うとだいたい、上の方がより必要だと考えられるわけです。

このうち1)の場合には、たいていはどんな重症な持病をお持ちの方でも
手術は行われます。
2)の場合にも、重症な持病をお持ちでも(患者さんが希望すれば)
ほとんどのケースが手術にもっていかれると思います。
ですのでご質問の
>持病が100%完治するまで私は全身麻酔を受けられないのでしょうか?
については
脳外科の先生のそのお話のしかただと恐らく2)についても
手術は受けられると思います。
3以降については、
患者さんが「わずかでも手術によって頭蓋内出血する危険があるのを承知して」
そのうえで手術を強く望むのであれば、手術が行われることもあるかもしれません。

あなたの場合にもうひとつ考えなければいけないのは時間の要素です。
>今後の検査結果により治療を追加するかもしれない状態
じきに持病が今よりもいい状態になることが望める、というというのであれば
それを待つことは、麻酔の危険性を低くするためには
とても重要なことだと思います。

例えば、インフルエンザで40℃の熱が出れば、たとえ癌の手術でも
治るまで延期しましょうとなります。
これと同様に、時を待つことでリスクを減らすことができるのなら
(待つことで病気が進むというリスクと天秤にかけながらですが)
待つことも選択肢のひとつとなるでしょう。
# by narkome_d | 2008-05-21 06:47 | これから麻酔を受けるのですが

麻酔の副作用で難聴になることはありますか?

Q;
麻酔の副作用で難聴になることはありますか?


A;
腰椎麻酔(=脊椎麻酔)が原因で
聞こえが悪くなることが稀にあります。
ただしほとんどの場合、一時的なものです。

また、本当に麻酔が原因だとは
言い切れない場合もあります。
手術後に「麻酔が原因でない難聴」になることもあるからです。
診断のためには最低限、
耳鼻科と麻酔科の診察が必要でしょう。

「腰椎麻酔後の頭痛」と同様に
一時的なもので数日で治ることが多いため、
基本的には時間がたって治るのを待つのが
一番いい薬のように思います。
治りが悪い場合には治療を行うことがあるかもしれません。

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蛇足ですが、
麻酔による難聴だったとしても
恐らくは避けられない副作用だったはずです
(いわゆる“医療ミス”ではないと思います)。
また、麻酔を受ける前に「難聴の副作用が出る可能性がある」という
説明を受けなかったとしても、
それはごく稀な副作用なので
説明をしなかったことをあまり非難することはできないと思います。
実際の医療現場でも、そこまでは説明しないことがほとんどです。
# by narkome_d | 2008-04-13 00:23 | 麻酔の合併症?

予防接種から手術まで、どのくらい間をあければいいですか?

Q;
予防接種を受けると
すぐには手術ができないと聞きました。
インフルエンザの予防接種を受けた時には、
手術までにどのくらい間があいていれば大丈夫ですか?


A;
予防接種を受けてから手術までどのくらい開ければいいのかは、
決まりを作っている病院もあり、その期間は病院によって多少違います。
ですので手術を受ける科の主治医の先生に
お問い合わせいただくのが確実です。

標準的なところでは、
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生ワクチン;4週間
 ポリオ、麻疹、風疹
 MRワクチン、BCG
 流行性耳下腺炎(おたふく風邪)
 水痘(水ぼうそう)
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不活化ワクチン;2週間
 三種混合、インフルエンザ
 日本脳炎、B型肝炎
 肺炎球菌、Hib
--------------------------------
としているところが多いようです。
ご質問のインフルエンザは不活化ワクチンですので、
2週間あいていれば大丈夫な病院がほとんどと思います。

予防接種による副反応(発熱など)が出るかもしれない時期に
手術を受けてしまうと、副反応がでてしまってもわからなくて困る、
というのが、この期間をあける主な理由だと言われています。
(かつては、手術や麻酔により免疫が落ちてしまうので
 間をあけないと良くないと言われていました)

もしこれを知らずに手術予定日の前に
あまり間をあけずに予防接種を受けてしまった時でも、
予防接種の種類や手術の内容によっては
問題なく手術を受けられる場合もありますので、
主治医や麻酔科担当医と相談してみてください。
(ただし生ワクチンを接種後にはより注意が必要ですので、
最低3週間はあいていた方がよろしいかはと思います。)

緊急手術の場合には
予防接種を理由に手術を延期ということはまずありませんし、
間があいていないことを心配しなくていい場合がほとんどです。
# by narkome_d | 2008-03-19 00:02 | これから麻酔を受けるのですが

流産手術後のひどい吐き気。麻酔があわなかったのでしょうか?

Q;
今日、流産手術を静脈麻酔で受けてきました。
目が覚めた直後から吐き気がひどく、
10時間くらいたちますが、まだ気持ち悪いです。
麻酔があわなかったのでしょうか?
これはいつまで続くのでしょうか?


A;
大変な手術だったのに吐き気もひどいとのこと、
さぞかしお辛いこととお察しします。

一般的に、子宮や卵巣へ刺激が加わると
吐き気が生じることが多いものなのです。
辛いですが、長くてせいぜい一晩くらいではないかと思います。
きっと明日の朝は、今よりだいぶ楽になっていますよ。

もし今、他のページも見られるようでしたら、
「手術後の吐き気の治療法は?」も参考にしてみてください。

麻酔が合わなかったことを心配する必要はほとんどありませんが、
もし次回に麻酔をうける機会があったら
「流産手術の術後に吐き気がひどくて辛かった」と
担当麻酔科医に伝えていただくと、
より吐き気を生じにくいような麻酔法を
考慮してもらえるかもしれません。

お大事にしてくださいね。
# by narkome_d | 2008-01-26 00:26 | 麻酔の合併症?

手術前に絶食できなかった患者さんは大丈夫なんでしょうか?

Q;
手術する前には、麻酔のために
半日以上前から絶食するのだと聞きました。
でも、緊急手術で同じように全身麻酔する患者さんは
半日も絶食していない人が多いと思うんですが、
麻酔をかけても大丈夫なんでしょうか?


A;
緊急に手術となったために
麻酔前に絶食ができなかった患者さんでは、
麻酔の危険性が高くなります。

ですのでその危険性と緊急度とを天秤にかけなくてはならないのです。
今すぐ必要な手術であれば危険ではあるけれどすぐに麻酔、となるし、
ある程度(半日程度でも)遅くなってもかまわない手術であれば
開始時間を遅らせてからの手術とすることもあります。

絶食ができなかったときに危険なのは、
全身麻酔で寝た直後に嘔吐すると吐物が肺に流れ込んで
重症の肺炎(誤嚥性肺炎;ごえんせいはいえん)を起こすことがあるからです。
絶食ができなかったときにその肺炎を防ぐような技術はもちろんありますが
確実ではないことと種々の合併症がありますので、
やはり絶食できるものならした方が
肺炎予防の点からは安全なのです。

ただ、絶食していない場合でも数百人に一人程度の頻度ですので
(患者さんは)過度の心配は不要と思います。
ちなみに絶食している場合でもこの肺炎は完全には防げず、
およそ数千人に一人で発症すると言われています。
# by narkome_d | 2007-11-01 23:05 | ちょっとした疑問など

麻酔に関するQ&Aとかなんとか。 まったりやってます。


by narkome_d